「SS400」と「SS400B」の違いって何?見落としがちな表記の意味を徹底解説

「SS400」と「SS400B」の違いとは?見落としがちな表記の意味を徹底解説
鋼材の仕様書や図面で「SS400」と「SS400B」という表記を目にすることがあります。一見同じように見えるこの2つですが、実はJIS規格の改訂により明確な違いが生じています。本記事では、SS400とSS400Bの違いを中心に、その背景・意味・使い分けをわかりやすく解説します。
SS400とは?基本的な性質と特徴
SS400とは、JIS G 3101に規定される一般構造用圧延鋼材(Rolled Steel for General Structure)の一種で、建築・橋梁・車両部品など幅広く使用されています。SSは「Steel Structure(構造用鋼)」を意味し、400は引張強さが400MPa級であることを示します。
SS400の主な化学成分と機械的性質
| 成分 | 含有量(%) |
|---|---|
| 炭素(C) | 0.05〜0.23 |
| マンガン(Mn) | 0.30〜0.60 |
| リン(P) | ≦0.050 |
| 硫黄(S) | ≦0.050 |
機械的には降伏点245MPa以上、引張強さ400〜510MPaが標準です。溶接性・加工性に優れ、汎用構造用鋼として最も多く使用されています。
SS400の詳細な規格についてはJIS(日本産業規格)で確認できます。
SS400Bとは?Bが付く意味と背景
「SS400B」の「B」は、「JIS改訂後の区分表示」を意味します。2007年のJIS G 3101改訂で、従来の「SS400」は「SS400B」として再分類されました。Bは「圧延状態(As Rolled)」を示しており、熱処理を施さない標準的な供給形態です。
つまり、現在流通しているSS400はほとんどがSS400Bに相当します。旧来の表記「SS400」は、過去のJIS規格に基づく呼称であり、現在では正式には「SS400B」と表記されるのが正確です。
JIS改訂による表記の違い
| 改訂前(旧JIS) | 改訂後(現JIS) |
|---|---|
| SS400 | SS400B |
| SM490 | SM490A/B/C |
このように「A」「B」「C」は圧延状態や熱処理条件を表しています。Bは標準的なロール材を意味し、Cは制御圧延などの特性を示します。
材質表記の変更の背景については日本鉄鋼連盟の資料で詳しく説明されています。
SS400とSS400Bの実質的な違いは?
結論から言えば、実質的な機械的性質に大きな違いはありません。ただし、以下のような点に注意が必要です。
| 比較項目 | SS400 | SS400B |
|---|---|---|
| 規格 | 旧JIS G 3101 | 現JIS G 3101(2007年改訂) |
| 表記の意味 | 一般構造用圧延鋼材 | 圧延状態(As Rolled)を明示 |
| 流通状況 | 旧規格として一部記載あり | 現在の主流表記 |
要するに、「SS400B」は旧SS400を引き継いだ現行名称であり、実際の性能差はありません。混同を避けるため、正式な表記であるSS400Bを使用することが推奨されます。
選定時の注意点
- 設計図面や仕様書に「SS400」と書かれていても、現行製品は「SS400B」で代用可能。
- 正式な検査証明書(ミルシート)では、必ず「B」付きで発行されます。
- 海外規格(ASTMやEN)と比較する際は、B表記を基準にするのが安全です。
規格変更に伴う材質選定のポイントについては、「鋼材選定の基礎とグレード比較に関して解説」で詳しく解説しています。
SS400Bが使用される代表的な用途
SS400Bはその優れた加工性と溶接性から、次のような幅広い分野で使用されています。
- 建築構造物(梁・柱・基礎プレートなど)
- 橋梁部材・鉄骨フレーム
- 産業機械のフレーム
- 船舶や車両の部品
これらの用途における加工や溶接の最適条件については、「鉄鋼材の溶接ガイドに関して解説」で詳しく紹介しています。
SS400Bと他グレード(SS490など)の違い
構造用鋼材の選定では、強度や溶接性の観点からSS400BとSS490などの上位材を比較することが重要です。以下は主な比較表です。
| 鋼種 | 引張強さ(MPa) | 溶接性 | 用途例 |
|---|---|---|---|
| SS400B | 400〜510 | 良好 | 一般構造材 |
| SS490B | 490〜610 | 中〜良 | 高強度構造物 |
| SM490B | 490〜610 | 良好(制御圧延) | 橋梁・高層建築 |
よくある質問(FAQ)
まとめ:SS400Bが現在の正式名称
「SS400」と「SS400B」は、実質的には同一材質ですが、現行JISではSS400Bが正式な表記です。旧表記が残っている理由は、過去の設計・製図や取引慣習によるものです。正確な知識を持つことで、設計・調達ミスを防ぎ、信頼性の高い製品選定が可能になります。

