鉄と鋼の違い – 金属加工の基礎知識

鉄と鋼の違いについて解説します。鋼は鉄に炭素などの元素を加えて作られた合金で、鉄よりも強度、硬度、耐食性に優れています。
鋼にはさまざまな種類があり、用途に応じて使い分けられます。代表的な鋼の種類には、SS材、SM材、SC材などがあります。
SS材は軟鋼とも呼ばれ、加工性に優れているため、機械部品や構造物など幅広く使用されています。SM材は中炭素鋼と呼ばれ、強度と靭性を兼ね備えているため、シャフトや歯車などの重要な部品に使用されます。SC材は炭素鋼とも呼ばれ、高強度と耐摩耗性に優れているため、工具や刃物などに使われています。
鋼とは?鉄との違いを解説
鉄と鋼はどちらも鉄を主要成分とする合金ですが、炭素含有量によって分類されます。鉄は炭素含有量が0.02%以下であるのに対し、鋼は0.02%~2.11%の炭素を含んでいます。この炭素含有量の違いが、鋼の強度や硬度、靭性などの特性を向上させています。
鋼は鉄よりも硬く、強く、靭性に優れているため、橋梁や建築物、自動車、機械部品など、様々な用途に使用されています。鉄はねじや釘、板金など、比較的強度が求められない用途に使用されることが多いです。
以下は、鉄と鋼の特性を比較した表です。
特性 | 鉄 | 鋼 |
---|---|---|
炭素含有量 | 0.02%以下 | 0.02%~2.11% |
強度 | 比較的柔らかい | 硬く、強い |
硬度 | 比較的低い | 高い |
靭性 | 比較的低い | 高い |
用途 | ねじや釘、板金など | 橋梁、建築物、自動車、機械部品など |
鋼は鉄に炭素を添加することで特性を向上させた合金です。様々な用途に使用されており、私たちの生活を支える重要な素材となっています。
鋼の種類とは?
鋼は鉄に炭素を加えて強度を高めた金属です。その炭素の含有量や製造方法によって、さまざまな種類の鋼が存在します。代表的な鋼の種類を以下に示します。
- 炭素鋼:炭素含有量が0.2~0.6%の鋼で、一般的な鉄鋼材です。強度や硬度が鉄よりも高いため、機械部品や建築材料などに幅広く使用されています。
- 合金鋼:炭素鋼にクロムやニッケル、マンガンなどの元素を添加した鋼です。これらの元素が加わることで、強度や耐食性、耐熱性などの特性が向上します。機械部品や工具、建築材料などに使用されます。
- ステンレス鋼:クロムを10.5%以上含む鋼で、耐食性に優れています。そのため、食器や医療機器、化学プラントなど、腐食しやすい環境で使用されます。
- 工具鋼:タングステンやモリブデンを添加した鋼で、硬度や耐摩耗性に優れています。そのため、工具や刃物などの用途で使用されます。
- 高速工具鋼:タングステンやコバルトを添加した鋼で、高温でも硬度を維持できるため、高速切削工具に使用されます。
鋼は用途に応じてさまざまな種類に分類されており、それぞれに適した特性を持っています。
様々な鋼の種類
鋼は、鉄に炭素を添加した合金であり、様々な種類が存在します。 各鋼の種類は、用途や特性に応じて、異なる比率の炭素やその他の元素を含んでいます。 以下は、代表的な鋼の種類と、その特徴をまとめた表です。
鋼の種類 | 炭素含有量(%) | 特性 | 用途 |
---|---|---|---|
SS材 | 0.15 以下 | 柔らかく加工しやすい | 冷間圧延鋼板、薄板など |
SM材 | 0.15~0.35 | 強度と靭性のバランスが良い | 機械構造用鋼、ボルトなど |
SC材 | 0.35~0.60 | 強度が高い | シャフト、ばねなど |
それぞれの鋼材は、さらに様々な種類に分類され、用途に応じて使用されています。 例えば、SS材は、冷間圧延鋼板や薄板として、缶や自動車の外装に使用されています。 SM材は、機械構造用鋼やボルトとして、橋や建物の構造に使用されています。 SC材は、シャフトやばねとして、機械や自動車の部品に使用されています。
これらの鋼材は、現代社会のあらゆる分野で重要な役割を果たしています。
SS材の特徴・成分値
SS材は、JIS規格で定められた汎用構造用圧延鋼材です。様々な用途に使用されており、最も一般的な鋼材の一つと言えます。
<SS材の特徴>
- 強度と靭性に優れている
- 加工性と溶接性に優れている
- 価格が比較的安い
<SS材の成分値>
SS材の成分値は、以下の表の通りです。
成分 | 質量パーセント |
---|---|
炭素 | 0.15~0.23 |
マンガン | 0.30~0.80 |
ケイ素 | 0.15~0.40 |
リン | 0.035以下 |
硫黄 | 0.035以下 |
<SS材の用途>
SS材は、その汎用性から、様々な用途に使用されています。
- 建築物
- 橋梁
- 機械
- 自動車
SS材は、強度、靭性、加工性、溶接性、価格のバランスに優れた汎用鋼材です。様々な用途に使用されており、今後も需要が高まると予想されます。
SM材の特徴・成分値
SM材は、機械構造用炭素鋼の一種で、優れた強度と靭性を持っています。建築物や橋梁、車体などの構造部材として広く使用されています。
SM材の成分値は以下の表のようになっています。
成分 | 割合(重量%) |
---|---|
鉄 (Fe) | 96.5 以上 |
炭素 (C) | 0.15~0.28 |
マンガン (Mn) | 0.30~0.80 |
リン (P) | 0.04以下 |
硫黄 (S) | 0.04以下 |
ケイ素 (Si) | 0.20以下 |
SM材は、炭素鋼の中でも比較的炭素量が少ないため、高い靭性を持ち、衝撃に強い特性を持っています。一方で、炭素量が少ないため、硬度は他の炭素鋼に比べて低くなっています。
SM材は、熱処理によって性質を変えることが可能です。焼鈍処理を行うことで、軟らかくなり加工性が向上します。また、焼入れ処理を行うことで、硬度と強度は向上しますが、靭性は低下します。
SM材は、その強度と靭性のバランスの良さから、幅広い用途で使用されています。特に、建築物や橋梁、車体などの構造部材として使用されることが多いです。
SM材は、JIS G 3101に規定されており、強度区分によってSM400、SM490、SM520に分類されます。それぞれの強度区分は、引張強度で規定されており、SM400は400MPa、SM490は490MPa、SM520は520MPaの引張強度を有しています。
SM材は、日本国内で広く生産されており、国内需要の多くを賄っています。また、海外への輸出も行われています。
SC材の特徴・成分値
SC材は、冷間圧延鋼板の一種で、冷間圧延鋼板の中でもさらに厳しい圧延条件で製造されています。そのため、強度が高く、加工性にも優れています。また、表面が滑らかで、美しい光沢があるため、家電製品や自動車部品などの外観部品に多く用いられています。
<SC材の特性>
SC材は、以下の特性を持っています。
- 強度が高い
- 加工性が良い
- 表面が滑らか
- 美しい光沢がある
<SC材の成分値>
SC材の成分値は、以下の表のようになっています。
成分 | 含有量 (wt%) |
---|---|
炭素 (C) | 0.05 ~ 0.15 |
マンガン (Mn) | 0.30 ~ 0.60 |
リン (P) | 0.030 max |
硫黄 (S) | 0.030 max |
ケイ素 (Si) | 0.005 ~ 0.15 |
<SC材の用途>
SC材は、以下の用途に使用されています。
- 家電製品の外観部品
- 自動車部品
- 建材
- 雑貨
SC材は、強度が高く、加工性にも優れているため、幅広い用途で使用されています。特に、外観部品に多く用いられており、家電製品や自動車の美観に貢献しています。
<SC材の注意点>
SC材は、強度が高い反面、冷間加工によって加工硬化するため、曲げや絞り加工を行う際には注意が必要です。また、表面が滑らかであるため、傷がつきやすいという特徴があります。
<SC材のまとめ>
SC材は、冷間圧延鋼板の一種で、強度が高く、加工性にも優れています。また、表面が滑らかで、美しい光沢があるため、家電製品や自動車部品などの外観部品に多く用いられています。ただし、冷間加工によって加工硬化するため、曲げや絞り加工を行う際には注意が必要です。
まとめ
鋼は、鉄に炭素を添加することで強度を高めた金属です。鉄よりも硬く、強度が高いのが特徴で、橋や建物、機械など、強度が求められる場面で使用されます。一方で、鉄は鋼よりも柔らかく、加工しやすいのが特徴です。缶や釘、針金など、加工が必要な場面で使用されます。
鋼は、炭素含有量以外にも、添加元素によって様々な種類があります。代表的なものとして、SS材、SM材、SC材があります。SS材は、炭素含有量が0.15%以下の軟鋼です。加工性に優れ、冷間圧延鋼板や鋼管などに使われます。SM材は、炭素含有量が0.15%~0.35%の中間鋼です。強度と加工性のバランスが良く、機械構造用鋼などに使われます。SC材は、炭素含有量が0.35%以上の高炭素鋼です。強度が高く、バネや工具などに使われます。
鋼は、用途に応じて使い分けられています。強度が求められる場面では鋼が使用され、加工が必要な場面では鉄が使用されます。