鋼材を用途ごとに最適選定するための実務ガイド

鋼材の用途ごとの選定は、要求性能と使用環境を基準に、強度・靱性・耐食性・硬さ・加工性・コストを体系的に比較することで最適化できます。本記事では、設計者・調達担当者・加工現場で実務的に利用できる選定基準を整理し、主要鋼材の用途別の適合性を明確に示します。鋼材の種類比較に関して解説で詳しく解説しています。
鋼材選定の基礎:用途ごとに判断すべき5要素
鋼材を用途ごとに選定する際は、以下の5要素を定量的に比較します。
- 機械的特性(引張強さ・降伏点・靱性)
- 使用環境(温度・湿度・腐食要因)
- 加工性(切削・曲げ・溶接性)
- 熱処理による特性変化
- コスト(材料費・熱処理費・加工費)
特に機械部品では「引張強さ・硬さ・疲労特性」が重視され、構造材では「降伏点・靱性・耐食性」が優先されます。加工性に関して解説で詳しく解説しています。
主要なJIS鋼材の特性比較表
| 鋼種 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| S45C | 中炭素鋼。強度と加工性のバランスが良い。 | シャフト、ピン、機械部品 |
| SS400 | 一般構造用。溶接性が高く安価。 | フレーム、架台、ブラケット |
| SCM440 | 高強度。焼入れ焼戻しで高耐疲労性。 | ギア、ボルト、回転部品 |
| SUS304 | 耐食性が高い。食品・薬品環境に適合。 | 装置部品、配管、治具 |
用途別:最適な鋼材の選定基準
1. 軸(シャフト)用途
シャフトは「曲げ・ねじり荷重」「回転疲労」を受けるため、以下の要件を満たす必要があります。
- 引張強さ:800〜1000MPa以上(回転部品の場合)
- 高い疲労強度
- 焼入れ焼戻しが可能な材質
推奨材は以下の通りです。
- SCM435 / SCM440:高強度・高靱性、回転軸に最適
- S45C:一般シャフトに使用可能(ただし熱処理前提)
軸の仕上げ公差や加工精度に関して解説で詳しく解説しています。
2. フレーム・架台・ブラケット用途
構造材は以下の要件が指標となります。
- 降伏点:240〜400MPa程度
- 溶接性の高さ
- コストバランス
使用に適した鋼材は次の通りです。
- SS400:一般構造用鋼材の標準
- S45C:高強度が必要な構造部品
- STKR材:角パイプの構造用途に最適
3. 高温・腐食環境用途(食品・薬品・屋外)
環境因子が厳しい場面では以下の要素を重視します。
- 耐食性(特に塩分・化学薬品)
- 耐熱性
- 衛生性(食品設備)
推奨される鋼種は次の通りです。
- SUS304:一般的な耐食環境に対応
- SUS316:塩害・薬品環境に強い
- SUS430:コストを抑えたい場合に使用
加工方法からの鋼材選定
同じ用途でも加工方法により選定が異なるため、以下に加工別に整理します。
切削加工が多い場合
- S45C:切削性と価格のバランスが最良
- SUM材:快削鋼。大量加工に向く
- SCM材:強度が必要な精密切削品
溶接が多い場合
- SS400:溶接性が高い
- SUS304:ステンレス溶接構造物に使用
熱処理が必要な場合
- SCM435 / 440:焼入れ焼戻しで高強度化
- S45C:高周波焼入れに対応
よくある質問
鋼材選定の実務フロー
- 使用環境と荷重条件を数値化する
- 必要強度・耐食性・加工性を整理
- 候補鋼種を3〜4種類に絞る
- コストと加工方法を比較
- 最終鋼材を決定
用途別の最適化には、各鋼材の特性を理解した上で選定する必要があります。鋼材の熱処理特性に関して解説で詳しく解説しています。

